小児漢方外来
漢方は数千年かけて様々な世代の方の治療に用いられてきた薬であり、膨大な経験によってブラッシュアップされています。漢方薬は2種類以上の生薬を混ぜてつくられていて、科学的根拠に基づく効果が認められ、西洋医学の標準的な治療内容が示されている治療ガイドラインに有効性が記載されている漢方薬も増えてきています。 当院では、西洋医学の治療ガイドラインに記載された標準治療を中心に行っており、こうした標準治療では十分な改善が得られない場合に効果が期待できる漢方薬を組み合わせた治療を行っています。当院で処方する漢方薬は有効成分を粉状にしたエキス剤で、そのまま、あるいは水や湯に溶かして飲むことができます。
夜泣き治療
赤ちゃんの夜泣きは病気ではないと考えられていて、有効な治療法がありません。
ただし、夜泣きが続くと保護者のママやパパの睡眠不足に拍車をかけ、特にママは心身の回復が重要な産後に疲労が蓄積してしまう原因になってしまいます。
漢方では、昔から赤ちゃんの夜泣きに小児漢方として甘麦大棗湯などを使った治療が行われてきています。
当院では、赤ちゃんの夜泣きに対して、生活リズムや睡眠環境を整えるためのアドバイスに加え、漢方薬を処方する治療を行っています。小児漢方では、母親とお子様が一緒に漢方を飲む「母子同服」という考え方があり、母子の心身のバランスを同時に整えることを重要視しています。
当院では、ママの心身の疲れをほぐし、元気を取り戻すことも大切という観点から、母子同服の治療も行っています。
なお、頑固な夜泣きには疾患や発達障害などが隠れている場合もあります。
また、夜泣きに加えて睡眠時にいびきがある場合には睡眠時に低呼吸や無呼吸を起こしている可能性もあります。こうした疾患の疑いなども視野に入れて診察していますので、夜泣きでお悩みの場合にはお気軽にご相談ください。
漢方の使用と同時に、生活リズムや睡眠環境を整えることも重要です
生活リズム
朝6~7時に起床し、朝日を浴びると体内時計がリセットされ生活リズムが整いやすくなります。
日中、赤ちゃんが体をしっかり使って十分に遊べるようにして、ベビーカーでお散歩もしましょう。
生後8ヶ月を過ぎたら、お昼寝をしていても17時前に起こしてください。
朝日を浴びる、ベビーカーでお散歩は、ママの生活リズムを整えるためにも有効です。
また、お散歩で外に出ると風や日射し、草花、鳥の声、様々な香りなどで五感が刺激されます。五感の刺激をたくさん受けることで、赤ちゃんの心身は健やかに成長していきます。
睡眠環境
入浴から睡眠前のルーティンを決めましょう。
入浴・ママとのストレッチ・ミルク・読み聞かせ・就寝などを毎日同じ順番で行うことで、赤ちゃんも眠りに向かう準備ができます。
- 寝る前にスマホやタブレット、テレビを見ない。
- 画面の光刺激によって入眠しにくくなります。
- 寝室をできるだけ暗くして、温度や湿度も適度にコントロールしましょう。
睡眠は、脳の成長のためにも不可欠です。深い睡眠をしっかりとることで心身が発達していきます。
良質の睡眠によって、記憶の固定や成長ホルモンの分泌が促され、自律神経のバランスも整います。
甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)
夜泣きに効果的な理由
甘麦大棗湯は、心身の興奮を鎮めて、不安定な状態を改善する働きがあります。夜泣きは、ささいな精神的不安・ストレスで起こりますが、甘麦大棗湯の服用によって、これらの症状が改善されると考えられています。
使用方法
小児への服用方法は年齢や目的に合わせて分量や回数を調節して処方いたします。「漢方薬は苦くて飲めないのでは?」と心配されると思いますが、乳幼児でも内服していただける比較的飲みやすい漢方薬ですのでご安心ください。水かぬるま湯が基本ですが、お薬を上手に内服するためのゼリーでも大丈夫です。小児では食前・食後はどちらでも構いません。
注意点
甘麦大棗湯は、一般的に安全性が高いお薬ですが、まれに下痢や胃腸の不調などの副作用が出ることがあります。
抑肝散(よくかんさん)
夜泣きに効果的な理由
抑肝散は、気の流れ(漢方での解釈)を調節してイライラや興奮を鎮めるという状態を改善する働きがあります。夜泣きは、気の流れの乱れによって起こるとされ、抑肝散の服用によってこれらの症状が改善されると考えられています。また、かんしゃくにも効果があります。
使用方法
小児への服用方法は体重や目的に合わせて分量や回数を調節して処方いたします。「漢方薬は苦くて飲めないのでは?」と心配されると思いますが、乳幼児でも内服していただける比較的飲みやすい漢方薬ですのでご安心ください。水かぬるま湯が基本ですが、お薬を上手に内服するためのゼリーでも大丈夫です。小児では食前・食後はどちらでも構いません。
注意点
抑肝散は、一般的に安全性が高いお薬ですが、まれに下痢や胃腸の不調などの副作用が出ることがあります。
お薬の飲ませ方
お子様の月齢、個性などによって適した方法が異なります。当院では、ママやパパとお子様の負担が少なくなる方法を具体的にいくつもお伝えしていますので、お悩みがありましたらご相談ください。
薬を飲ませる際の注意
生後1歳未満の乳児にはハチミツを与えないでください。乳児ボツリヌス症を発症する危険性があります。
ジュースなどに混ぜて与える場合、薬によっては苦味が強く出てしまうケースがあります。
また、糖衣などコーティングされている薬は液体に入れてしばらくたつとコーティングが取れて、強い苦味を感じるようになることがあります。混ぜるものなどについては、医師や薬剤師に相談してください。
新生児~1歳未満
- 白湯に溶いてスプーンで与える
- 少量の白湯で錬って、口内に塗りつける
- 服薬補助ゼリーやシロップに混ぜる
幼児~7歳未満
- 服薬補助ゼリーやシロップに混ぜる
- オブラートに包む
- チョコレートや練乳に混ぜる
- ジュース、ヨーグルト、プリンなどに混ぜる
服用のタイミング
薬には、食前(1時間~30分前)、食間(空腹時)といった服用タイミングがあります。
そのタイミングで服用することで、最大の効果を得られ、最小の副作用に抑えられます。飲み忘れてしまった場合は、気づいた時点で1回分服用し次の服用時間を調整してください。
保管方法
お薬は温度や湿度の変化が少なく、光が直接当たらない冷暗所に保管してください。再分包された薬は湿度に弱いため、乾燥剤を入れた密閉容器に保管しましょう。